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同居人(16) [TSF関連]

 結局、ようやく気持ちの整理が着いた私が女子寮に帰ったのは、それから数時間経ってからのことだった。

 その女子寮の前に、見知った顔があった。私が自分の次によく知る人物――もちろんそれは・・・

「よう、首尾はどうだった?・・・その顔じゃ上手く行かなかった?」

「・・・」

 心底、私のことを気遣っている。それが如実に分かるような表情を浮かべている馬場くん。ああ、やっぱりそうなんだ――

「ダメだった。ダメだったけど、一つ判ったことがあるの」

「ん?判ったって?何のことだい?」

 幾分緊張しながら聞いてくる馬場くん。私の口からどんな言葉が飛び出すのか、まるで見当のついていない様子だ。私本人にだって今からどう展開してくか、まるで分かってないのだから。

「さっき、衛くんに告白したんだけど、断られちゃったんだよ――いや、それはもう済んだことだからいいんだけど、その時に彼に言われたのよ。それで判ったんだよ。私の本当の気持ち」

「本当の気持ち?どういうことだ?」

 どうやら彼も薄々は気付いているのだろうけど、それを私の口からいわせるつもりらしい。まあ、それも仕方ないか。ずっと気付かなかったのは私なんだし。

「――結局、私っていつも自分勝手に動いていたんだね。それでみんなに迷惑掛けてたんだ。それがやっと分かった」

「??」

「ゴメン。やたらと遠回しだったね。言葉にするの、ちょっと怖かったんだ。馬場くんがどう受け取るのかが想像できなくて。でも、大事なことだからちゃんというよ」

「な、何だい」

「私、衛くんじゃなくって、馬場――洋くんのことが好きだったみたい。あなたが私のことをどう思っているのかは解からないけど、これが私の気持ち。――受け取ってくれるかな?」

 恥ずかしい――恐らく顔は真っ赤になってしまっているだろう。まったく、一日に二度も告白するなんて、一生のうちにもうないことだろう。

「そっか。そうだったんだね。気付いていなかったかもしれないけど、入れ替わってからこっち、おれはずっとお前のことが気になってたんだぜ。だけど、お前が衛に気があったみたいだから、応援してきたんだ。だから――」

 がばっと洋くんが私を抱きしめてきた。もちろん、私は抵抗などせず、彼の背中に腕を回し、彼の体を自分の方に引き寄せる。彼のぬくもりというか熱が私を包み込み、幸せな気持ちが全身に広がっていく。そっか、これが――

「もしかして、私たちが入れ替わったのも、神様のプレゼントだったのかもね」

「――ああ、そうかも。運命って奴があるとするなら、おれたちは入れ替わるべくして入れ替わったのかもな」

「そうだよ。だから、二度と入れ替わらないように、私をずっと好きでいてよ」

「うん。きっとな。だっておれたち、これほどの強い絆を持っているんだもの」

「・・・そうよね。私の部屋も何も――あ、そういえば洋くんって、私のハダカとかも見たんだ!うーっ!」

「ちょ、しょ、しょーがないだろ?一日中服を脱がないで過ごすなんて不可能なんだったら!いいじゃないか、こうして二人は付き合うことになったんだから!」

 私は彼に詰め寄るようなフリをして、再び彼を抱きしめた。今度はちょっと強く。彼も私を優しく受け止めてくれる。そっか、この優しさが私に彼を肉親に感じさせたんだね。

「なあ。プールのシーズンは終わっちまったけど、隣町に温水プールがあるんだけど、そこへ行かないか?今度は二人きりでさ。きっと楽しめると思うんだ」

「うん!じゃあ、明日早速行こう!」

 私の気持ちは早速明日に飛んでいた。私と洋くん、きっと上手く行くと思う。だってこれほどお互いを分かり合っているカップルは他にないもの。さ、部屋に帰って智夏に報告しなくっちゃ!――洋くんと付き合うことになったんだ、ってね。

(おわり)


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コメント 3

ミグ

完結おめでとうございます。
まさかこんなハッピーエンドが待ち構えていたとは・・・。
個人的には主人公の知らないうちに、衛と馬場が恋仲になって
血みどろのTSF3角関係を期待していたのですが、
ライトでしたね。う~む。
by ミグ (2006-05-07 12:32) 

nekome

完結、お疲れ様です&おめでとうございます!
自分は一時期、入れ替わり維持のままでカップル2組成立なんて展開を(しかも二通り)考えてました。
う~ん、まともなハッピーエンドを予想しないのは自分の歪みの表れか(笑)

珍しい女性視点一人称TSFなんですが、常に描写が丁寧で、Satoさんの筆力の高さを思い知りました。
とっても面白かったです!
by nekome (2006-05-07 22:58) 

さと

普通に終わらせちゃいました。
ここどこまでのエロが許されるのかが不透明なので、
ライトな話を連載させていただきました。
女性一人称ってのはダークになりがちなんですけどね。
かなり抑えきってしまいました。
次回はもう少しハードにはしたいですね。
by さと (2006-05-07 23:27) 

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